ベトナム・ハーナム省の農業関連視察

この記事を書いた人:


丹野です。

ベトナムに農業関連の視察に行ってまいりました。

弊社のプロジェクトの多くは民間の事業会社様の要望に基づく支援なので、政府関連の視察にお誘い頂き、超長期的な目線で対象国について考えることは非常に珍しいことで、大変勉強になりました。

ベトナムの農業の現状

ベトナムにおいて農業は大変重要な役割を担っており、2010年当時のデータではGDPの約20%以上を担う巨大な産業となっていました。

コメ、ナッツ、コーヒーの世界シェアが例年上位に食い込んでいることはご存知かと思いますが、高付加価値化に課題があるということはよく言われているので、その点についても肌で感じよう、というのが今回の視察に参加した趣旨でした。

ちなみに、私の農業に関する経験で言うと、ブラジル・アメリカの大規模農業(大量生産型)については、既に10回以上は視察経験がありますし、具体的な日本からの技術移転や共同生産の方向性提案等についても行っていましたので、全く未知というわけではありませんでした。

あと、実を言うと私の家の本家のある福島県では、祖母が農業してたなぁ、なんて。実はそんな記憶と経験もあります。

 

が・・・。

まぁやはり小規模農業型のベトナムについては、恥ずかしながら「全く知見が役立たなかった」というのが正直なところです。

ベトナム_6899

 

ベトナムの画像をインターネット等で調べるとこのような物がよく見つかりますが、実際に現場に行くと、少し先端の技術を使ったところでも、農機の一台も見つからないわけです。

 

唯一見つけたのが、日本で1960年代に使われてたのではないかという建機がその地域に1台有るのみ(何故か、それを輸送で使っているそう)。

このように、生産に関する技術を持たない上に、付加価値の有る生産品を作る知識も不足しているため、そうした部分を日本に求めているのだそう。

実際に、ベトナムにおけるお茶の販売価格を見ると、ほぼ付加価値がつけられておらず、かつまた生産効率も悪い、そのような状況になっていました。

JICA・そして日本の技術支援の価値

さて、上記はベトナムにおいて、ベトナム国内の政府より金銭面での支援を受けた農村部(ハノイから1時間程度)に行った事例ですが、次の日には、JICAさんの支援した農村部(ハノイから1.5時間程度)に行ってきました。

ベトナム_8496

 

余り詳細には話せませんが、公表可能な範囲で言うと、ハナム省では、日本のJICAの支援でICTを活用した農業生産の検証が行われており、将来的にICT農業地区を作っていく、というような事が話し合われていました。

 

また、通常の生産者誘致にも力を入れており、ハナム省であれば、土地や進出までの許認可について、かなり優遇された措置で進出が可能になる、というものでした。

 

今回感じた事としてお伝えしたいのが、

JICAの資金によって、ベトナム農業に確実に新しい風が吹いているということです。

最初に訪問した地域と、JICAの支援エリアであるハナム省の支援エリア、確実に言えることは生産ノウハウの違いが存在していることでした。それは設備面での問題もそうなのですが、例えば苗を植える間隔であったり、間引きの手法であったり、そういう人で価値づくりができるはずの部分が少しでも伝承された、そういうことを強く感じました。

ハナム省では、下記のように、ビニールハウスや日本に近い生産ノウハウを組み込んで生産されているわけです(もちろん検証用地帯であるため、物量等はそこまでありませんが)。

ベトナム_2788

 

 

 

 

 

 

 

ベトナム_3599

 

 

 

 

 

これをベトナム・ハナム省で行うことによって、ハナム省における日本の農業の価値が伝わり、今回のように省からの熱烈なラブコールを受けることができているんだな、ということが見て取れました。

正直、そうした目的の資金を作らなければ、民間企業でリスクを取ってこうした取り組みをすることは厳しいですし、今回のような日本に対する期待や評価へは発展しなかったものと思われます。

もちろん、それを可能にする外務省の皆様の働きや価値の高さがあってのものですが。

ベトナムでの農業生産にどのように進出するか?

さて、言えないことがあまりにも多く、大変浅いReportsになってしまったなと反省しているところではありますが、今回は上記の視察のみならずDigital Agricultual Associationという民間団体への訪問も行いました。

こちらでは、ICTに特化した展開だけではなく、「ベトナム全体の農産品にどう付加価値を付けるか」等の課題に日本の技術を用い、民間の強力なネットワークを活用して事業化を目指すことについて協議されているわけでございます。

新興地域において、次のダラット、いやダラットを超えるエリアを作れないか等の協議もなされているわけです。

それで、本題のベトナムでの農業生産にどのように進出するか?という部分ですが、現時点で、一つ方向性が見えてきております。ベトナム側の皆さんが描く巨大なマスタープランではなく、具体的なビジネスモデルに落とし込んだスモールスタート型の進出を加速させる、というのが方向性です。

この点は、ブラジルでの農業支援を行った際とは大きく異なっています。ブラジルの場合、大規模に資金をつみ、最新鋭の設備を投じて生産性向上(大量生産)を目指すビジネスモデルであったため、大手企業による進出が主となっていました。

ベトナムの場合はむしろ、生産量調整(多く生産をしすぎて価格下落がおこらないようにすること)や高品質化が鍵となります。よって、大手企業で技術とお金を提供して生産オペレーションを現地依存させるよりも、農業に詳しい個人が小規模に進出し、一人ひとりに適切に生産技術を伝達して行く方が適していると言えます。

世界の食物生産量が不足する可能性が高いことから、大量に生産できる事が善と考えていた私にとっては、当たり前ながら新しい視点を頂いたと思っています。

 

このモデルについて描くことも私の課題でありますので、来年早々にも動き出していこうと思います。

ベトナム_8591

 

 

 

 

 

(大使館おける農業生産についての協議にて)

この記事を共有する
Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Share on LinkedInEmail this to someonePrint this page