トランプの大躍進にみる”戦略プロフェッショナル”

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こんにちは。

Tryfundsの白髪です。

GWいかがお過ごしでしょうか。私もいろいろとGW中にInputできたので、また感じたことなどを別途書きたいと思いますが、本日は、”戦略”について書きたいと思います。

(政治的な思想や政策の是非を議論するものではありません)

戦略プロフェッショナル

戦略プロフェッショナルという本をご存知ですか?

三井石油化学工業、BCGを経て、現在はミスミでご活躍されている、三枝 匡さん(執筆当時社長)が執筆された小説仕立てになっているビジネス書です。

戦略

(※Amazon Webサイトから引用)

私は大学4年生でこの本に初めて出会い、社会人になってからも数回節目節目で読み返しています。読み返す度に自分の中で理解度が増しており、少し違った見え方ができる良書です。

ネタバレになってしまいますので詳しくは割愛しますが、ざっくりとした内容は、

経営戦略という文化がまだ浸透しきっていなかった日本の所謂事業会社において、ハーバード大学でMBAを取得した主人公(らしき人物)の広川洋一が、MBAで学んだことを活かしながら様々な変革を通じ、経営をポジティブな方向に導いていく。みたいなストーリーです。

一般的なMBAの経営戦略本などは少し教科書的な書き方をされているので、腹落ちしにくい部分もあるかと思うのですが、この書籍は小説っぽくまとめられているため、非常に読みやすく理解しやすいです。”経営戦略ってなんだかよくわからないけど重要そうだからもう少し詳しく知りたい”という漠とした思いが有る方にはとてもお勧めです。

さて、本日はこの経営プロフェッショナルの話を交えつつ、白熱するアメリカ大統領選挙について少し考察したいと思います。

ドナルド・トランプの大躍進

トランプ

(フリーイラスト素材)

先日、共和党からドナルド・トランプ氏の指名が実質確実になったとの報道がありました。対抗馬の候補者が選挙戦から降りてしまったからです。

トランプが単なる候補者の一人だった段階において、この展開を予想していた方がどれくらいいらっしゃったでしょうか。周囲の予想を覆してのまさに大躍進といえるでしょう。

彼の下馬評は決して高くはなかったと思いますが、結果として共和党内のライバルを次々と退け、ついに自分以外、他の候補者がいないため共和党も指名をせざるを得ないという状況を創りだしてしまいました。

その髪型と「メキシコとの間に壁を作る(メキシコ負担で)」「イスラム教徒は入国禁止にする」という極端な発言が注目されるトランプ氏ですが、一体どうしてここまでの躍進ができたのでしょうか。

この秘密に”戦略プロフェッショナル”的な視点が隠されているのだと思うのです。それがどういうことなのか。前述した書籍、「戦略プロフェッショナル(以下、当書)」をベースに下記で考えていきましょう。

トランプ×戦略

まず目標を先に決める

  • 当書において「まず目標を先に決める」という項目があります。戦略というのは何かを成し遂げるための手段でしかないので、目指すべきものがないと話になりません。本書では戦略実行においてブレない目標を設定しておくかが如何に大切かを示しています。「なんのために自分は頑張っているのか」をプロジェクト期間中、チーム全員で共有しておくことは推進力を維持するためにとても重要です。では、今回の選挙において、彼の目指していた絶対的な目標はなんでしょうか。
  • この戦いにおける彼の目標は、間違いなく「まずは指名獲得、その後大統領になること」です。その絶対的な目標を設定した上で、それを達成するためだけにトランプ自身も含めたチーム全員が選挙というルールの中で、戦略を実行し続けていたように感じました。
  • この絶対的な目標さえブラさなければ「従来の政治から政策がかけ離れているものであるか」「自分が国内外から批判される」ことは彼にとってはどうでもいいことにさえなるのかもしれません。要するに目標が達成できればいいわけですから、ライバルよりも一票でも多く票を獲得できるかどうかが唯一彼が気にしなければいけないことです。なんとなく彼の行動からは絶対的な、ブレない目標の存在を感じます。

市場の中でユニークさがあるか(競合に勝てるのか)

  • 当書において「競合」という言葉がたくさん出てきます。キョーゴー、キョーゴーと呪文のように従業員が唱えている描写があるのがとても印象的です。もちろん企業戦略を考える上では、競合の分析、自社との比較は非常に大切ですが、今回の選挙戦において、改めてどんな戦いでもこの視点は大切だなと感じました。競合相手と同じことをやっていては、どうやって誰を選んでいいのかわかりませんよね。
  • 何を言いたいのかというのは記述は必要ないかと思いますが、とにかくトランプと他の候補者とはいろいろと違います。「異端」という表現を使っているマスコミもいましたが、それほどまでに、トランプと他の候補者とでは、雰囲気、姿勢、政策、何もかもが違います。
  • しかしこれはある意味、競合との”違い”を戦略的に押し出していった結果とも考えられます。競争力の源泉は競争相手と差別化することです(それが受益者にとって意味のある差別化であることが前提です)。トランプは、競合との差別化が目標達成において如何に重要なのかを認識しており、政治の専門家しかわからないマイナーチェンジではなく、誰にでもわかる大胆な差別化戦略を採用したのではないかと思います。その辺りは実業家のマーケティング感覚があったのかもしれません。
  • ただ、戦略は前述のように”受益者にとって意味のあるもの”であることが前提です。政治の受益者は有権者です。そこで彼は次のような視点も踏まえて戦略を設計していたように推測します。

セグメンテーション

  • 当書では、経営戦略の要諦は「絞り」と「集中」であるとされており、「絞り」の説明の中でセグメンテーションにも言及されています。セグメンテーションというのは、経営戦略的には顧客となり得る対象全量を洗い出し、一定の軸でグループ分けを行った後、”誰を狙うか”を明確化するということです。
  • 選挙においては、顧客となり得る対象=選挙権を持つ有権者ですから、有権者全員中の、どのグループを狙うのかを明確にするということです。メディアでもよく言われている通り「教育水準がそれほど高くない白人のブルーカラー層」「現状への反体制派」などがトランプの支持者だとされていますが、その辺りが恐らく、事前にセグメンテーションしたターゲットなのでしょう。
  • セグメンテーションができれば、後はどう攻めるか、どう競合に勝つかの戦略づくりです。トランプは自分が狙ったセグメントにいる有権者に対して、訴求力の高い自身の差別化ポイントを押し出していきました。それは、自分が実業家であり自分の資金で選挙をしているということや、誰もが政治的・倫理的にタブーだとすることを平気で発言することなど、報道されている通りです。結果的に、狙ったところから指示が得られていそうに思うので、彼らのニーズをきちんと分析し、効果的な訴求ができているということを示していると思います。
  • 目標を達成するために獲得しなければならない票数が自分の狙っているセグメントに眠っていることに目をつけ、そこを徹底的に攻める。言い換えれば他の有権者は「捨てた」わけです。「絞る」ということは同時に「捨てる」ことでもあります。これを徹底できる強さは今回の予備選を見ていても感じるところはありました。

戦略を徹底できるか

前述した、「まず指名を獲得する」という目標をブラさずに持ち続け、勝負のルールを理解し、競合に打ち勝つために、ターゲットを絞りこんだ上で競合との”意味のある違い”を作り出し、ターゲットに向け的確に浸透させるという戦略を徹底的に実行したことがここまでの躍進の秘密なのではないでしょうか。

どれもこれも戦いに勝つ上では結構普通で当たり前のことなのですが、この普通で当たり前のことをきちんとやるということが重要なのですね。

こう言うととても簡単そうな気もしますが、実際この勝負は一瞬で終わるものではないので、小さな読み違えなど戦略通りに進まないこともあったかと思います。
恐らくその都度、小さく軌道修正をしながら絶対的な目標の達成に向けて「大統領になる!」という壮大なプロジェクトを力強く進めてきたように想像します。

恐らく彼の陣営には、常人が想像する以上に批判や誹謗中傷、抗議文などが届いたことと思います。しかし、そんな中でも決して挫けることなく予備選を戦い続けられていることは、トランプのリーダーシップの下、非常に強固な組織が構築されていることを示しているように思います。

当書の中にも、戦略を実行する上での、リーダーシップや組織づくりの重要性に言及がありますが、この点でもトランプは”戦略プロフェッショナル”であったと言えるかもしれません。

以上で、考察は終了です。

お付き合いいただいた方ありがとうございました。

戦略立案は、何かビジネスを行う上で基本ですが、それが故に最も重要だといっても過言ではありません。Tryfundsでは、「大統領になる!」というビッグプロジェクトではなくても、小規模から戦略づくりのお手伝いもさせていただいておりますので、何かお悩みがある方はいつでもお問い合わせください。

info@tryfunds.com

 

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